"不安な夢を見るということは、やはり不健康なことなんだなと思う。
昨晩原稿を仕上げた僕は、崩れ落ちるようにベッドに潜り込んで惰眠をむさぼっていた。
もともと僕は快眠快便をモットーにしている。とりわけ快眠にはうるさい。どれくらいうるさいかというと
「快眠のためなら、ムネノリ死んでも良いっ!」
とNHKの喉自慢で、全国のお茶の間に叫ぶくらいうるさい。ともかく、すんごくうるさいのである。
だが、時折思わずどひーと叫びたくなるような夢を見ることがある。これは僕にとっては非常に悲しいことなのだ。もしバクが夢を食べるという話が本当なら、枕元に専用のスペースを準備して
「頼むからオレの悪夢を食べちくりー」
と土下座をしてもいいとさえ思う。
ところが今朝はそんな夢を見てしまった。ようやく昼頃夢から覚めてみると、僕はベッドの中の自分が妙におかしいことに気がついた。
立派な中年の僕は、やはりお腹が気になるお年頃である。いつもなら
「ここにいます」
という感じで存在を主張する下っ腹が、褐色に見えた。起きて良く見ようとすると、背中に甲羅みたいな感触までする。
「これは、昔いじめた亀の呪いではないか。ひー、亀様ゴメンナサイ」
などと思いながらよくよく見ると、我がお腹は、茶色の蛇腹状態になっていて、腹筋運動をするとワシャワシャする。どうやらこれはいわゆる一つの「蟲」であるようだ。
いきなりカフカの名作の主人公にされてしまった僕は、いきなりi-modeを手渡された猿のように困惑してしまった。そりゃ若い頃は小説の主人公になりたいと思ったこともあるけど、モデルがあるではないか。「若きウェルテルになっちゃうもんねもんね作戦」ならぜひとも実行したいが、「ムネノリ『蟲』になっちゃいました大キャンペーン作戦」では格好がつかない。
ともかくワシャワシャとベッドを這い出し、トイレでウンチョスを投下している間に悩みまくった挙げ句、とりあえず
「悩んでもしかたないもんね」と結論を出した僕はこの原稿を書くことにした。
虫になってみると、手が4本使えるのでワープロを打つのが楽なことが分かった。こうしてみると虫でいるのも悪いことばかりではないのだが、友人達からムシされたりするんだろうかなどと、困惑することしきりである。
とりあえず、今年のお中元に殺虫剤はやめてほしいなあ。"